分析機器の開発・実用化

大学から生み出される新しい研究成果は、イノベーションの起源として多くの期待が向けられています。当グループでは、実際の研究をサポートする分析装置を提案・実証し、その開発を産学連携で進めることで、実用化へ繋げる取り組みを実施しています。

大学はアカデミアなので、製品の製造やサービスを行うことはできません。そのため、研究成果の実用化を担う既存企業と連携することや、大学の研究成果をもとに起業したベンチャーを介して、その成果を実用化し社会に普及させることを目標にしています(=技術移転)。技術移転は、大学の知的財産権が企業にライセンスまたは譲渡されるケース、共同研究や技術指導をつうじてノウハウが伝授されるケース、などがあります。

以下では、当グループから実用化された技術をご紹介します。詳しくは、こちら

■ 赤外ハイパースペクトルフーリエ分光
フォトニックバンドは、ナノ構造の光学特性を評価する上で重要な指標のひとつです。従来、フォトニックバンドを測定するためには、特定方向から光を入射し、それらの透過/反射特性を観測することで、評価を行うのが一般的でした。この際、それぞれのサンプル状態に適した形で光学系を組む必要があるとともに、光学系の調整を含めた測定・評価に多大な時間を要することが課題となっていました。当グループでは、フォトニックバンドをシンプルかつ高速に測定するために赤外ハイパースペクトルフーリエ分光を用いた手法を提案し、(株)東京インスツルメンツからFA-CEED® の製品名にて実用化に成功しています。

▲ 赤外ハイパースペクトルフーリエ分光のアルゴリズム

■ フォトニックバンドイメージング
マイクロ~ナノスケールの微小構造によって特定の波長の光を散乱、反射することで生み出される色を構造色と呼び、観測対象の持つ微細構造と屈折率が色を決める要因となります。構造色を論じることは、観測対象物の優れた構造や機能などを解析する上で大変有効ですが、一般的な光学顕微鏡で得られる画像は、色素由来の色と構造由来の色の区別することは困難です。そのため、実際に構造由来の発色の可能性を論じるには、走査電子顕微鏡などを用いた破壊評価が基本となります。当グループでは、測定対象を破壊することなくその構造由来の情報を反映した画像を取得する新しいイメージング手法 ―― フォトニックバンドイメージング(PBI: Photonic band imaging)を提案し、その実用化に成功しています。

▲ フォトニックバンドイメージングのアルゴリズム

▲ 装置のアルゴリズムの提案と光学実装・デモ
▲ 企業への技術移転による共同開発と実用化