光インフォマティクス

深層学習は、人間の神経細胞の仕組みを再現したニューラルネットワークを用いた機械学習の手法のひとつであり、画像認識・音声認識・言語翻訳などをはじめとした様々な分野で導入が進んでいます。深層学習は多層構造のニューラルネットワークを用いることが特徴であり、近年のコンピュータの処理能力の向上と利用可能なデータ量の蓄積が、その技術の発展を支える要因となっています。そのような中、ニューラルネットワークに必要な計算量は年々指数関数的に増大しており、このような急増する計算ニーズを支えるべく、GPU, FPGA, ASICなどを用いた様々なハードウェアアーキテクチャの開発が行われています。

当グループでは、光回路を用いて高いエネルギー効率を有する光演算処理を行うことで、ソフトウェアベースで構成したネットワークに比べて、高速性や省電力性に優れたハードウェアベースの深層学習技術の確立を目指します。また、各種フォトニック結晶の設計にソフトウェアベースの深層学習を導入することで、より柔軟な光デバイス設計が可能となる環境構築も行っています。

■ ハードウェアベースの光深層学習の確立
“光による超高速処理”は、電子回路で見られるような配線抵抗によるエネルギー損失がなく、波長多重化による高速並列処理も可能なことから、深層学習機能を実現する媒体として有望です。当グループでは、シリコンフォトニクスをベースとした光回路を用いることで、非線形性・短期記憶性・高次元性の特徴を有するソフトウェアでは再現できないネットワークを構築し、それらを従来のソフトウェアベースの深層学習処理を組み合わせることを目指しています。

▲ 光回路をベースとした深層学習処理の概要

■ 各種フォトニック結晶の深層学習設計
画像認識の際に広く用いられるConvolutional Neural Network (CNN)は、各画素の色を指定するために複数のチャネル(R, G, B)を持つことや、全結合ネットワークでは考慮されない画素位置に依存した特徴量を参照することができます。この特徴が、フォトニック結晶の各単位胞に複数個の設計パラメータをもつことや、デバイス全体が単位胞を組み合わせた二次元構造をとっていることと類似していることから、CNNは各種フォトニック結晶の設計に極めて適しています。

深層学習による構造設計の流れは、(1)学習に用いるためのデータセットをRsoft Photonic Device Toolsを用いて収集 (2)データセットを変換し、それらを学習させることでネットワークの構成と最適化を実施 (3)最適化されたネットワークを用いて探索アルゴリズムに従って最適構造を決定する、という流れで研究を進めます。

▲ トポロジカルフォトニック結晶の構造最適化のための深層学習ネットワーク例
▲ PythonとFimmpropの統合環境による仮想的な光深層学習モデルの構築
▲ 実際の光デバイスを用いた光深層学習処理