3次元光造形

CPO(Co-Packaged Optics)を含めた光電融合デバイスにおいて、各光デバイス間を結合する技術として、レンズによる集光の他に「エッジ型光ファイバ結合(Edge Fiber Coupler)」と「回折格子型光ファイバ結合(Grating Fiber Coupler)」の2種類の技術が開発されています。両者の違いは、光ファイバと光導波路の配置の違いで、前者は光ファイバのエッジ(端面)と光導波路のエッジ(端面)を平行な方向に近接させて接続させるのに対して、後者は回折格子(グレーティング)を結合部分に形成することにより、導波路に対して垂直方向から光を誘導する技術です。

当グループでは、光硬化性樹脂によるフォトニックワイヤボンディングにより各デバイス間を三次元的に光接続する技術を研究しています。本技術は、業界標準であるレンズ実装で必須とされる調芯工程を省略することができ、各デバイス間をレンズフリーで接続できることから、潜在的なポテンシャルは極めて高いといえます。

■ 光電融合のためのフェムト秒レーザーによる三次元描画技術
Yb:KGWフェムト秒レーザーからの近赤外線パルス光を光硬化性樹脂に照射することで、二光子吸収により集光点のみで材料が硬化する高精度光造形が可能となります。本技術を用いることで、後工程でデバイスの任意の箇所に三次元の樹脂細線を形成可能となり、各種光デバイスを高精細なアラインメントなしにレンズフリーで接続可能となります(フォトニックワイヤボンディング)。また、フェムト秒レーザの出力および挿引速度をレイアウト形状に対して自動で変化させて描画する技術も有しており、これによって極めて精細で連続的なパターンを描くことが可能となっています。

▲ フェムト秒レーザーによる三次元描画における露光レイアウト
▲ 当グループで実施した三次元描画の一例

■ 三次元描画用の樹脂材料の開発
三次元描画技術で形成された樹脂細線において高効率な光閉じ込めを実現するために、光硬化性樹脂自体の屈折率はできるだけ高いことが望まれます。そのような目的から、当グループでは、三井化学株式会社と共同開発した光硬化性樹脂を用いています。具体的には、硫黄含有のアクリル酸チオエステル化合物およびo-フェニルフェノキシエチルアクリレートを適切な割合で混合することで、三次元描画用光硬化性樹脂としては世界最高の屈折率1.65, アッベ数31を有する材料を開発することに成功しています。併せて、光硬化性化合物に対する光重合開始剤の含有率を調整することで、描画解像度200 nm以下を達成しています。

▲ 三次元描画用の高屈折率樹脂

▲ Lumericalによる光伝搬解析とFusion360を用いた3次元描画用モデリング
▲ フェムト秒レーザーによる3次元描画装置のセットアップ