光集積回路(PICs: Photonic Integrated Circuits)とは、光通信で必須とされる種々の機能をワンチップ上に一括集積したものです。単一機能の光デバイスに比べて、実装コスト・消費電力・サイズなどの低減が可能なことから、数多くのデバイス群が実用化されており、現在の光市場を席巻しています。
光集積回路はその歴史上、光通信用途を前提に研究開発が進められた経緯もあり、光源である半導体レーザを一括集積できることから、化合物半導体であるInPをベースとしたものが主流でした。しかし、光源が必要とされない回路においては、低損失かつ高密度集積が可能なシリコンを用いた方が、性能・コストの両面で優位性があります(シリコンフォトニクス)。鬼門であった光源についても、InP系半導体レーザのハイブリッド接合技術の発展に伴って集積が可能となっています。当グループでは、シリコンをベースとした様々な光回路を設計・実現しております。
■ 光ネットワークの伝送性能
光ネットワークの伝送性能を決定する基盤技術には、「ボーレートの高速化」「多値化」「多重化」の3つがあり、これらを組み合わせることで、超高速光通信が実現されます。「多値化」軸の主な要素としては、光の強度と位相、一方の「多重化」軸の主な要素としては、光の波長が挙げられます。 それらに加えて、光の二つの自由度(偏波と光渦)を積極的に利用した伝送方式が注目されており、それぞれを「多値化」または「多重化」軸に組み込むことで、伝送容量を大幅に増やしたり、伝送容量を増やしつつ受信感度を高めることが可能になります。
■ 光渦・偏波多重デバイス
当グループでは、光渦を利用した多重化伝送に注目し、シリコンフォトニクス技術を用いた光渦多重器の開発を行っています。特に、イオン照射によるシリコン3次元湾曲技術により、低損失で波長無依存性な光渦合分波をチップレベルで実現し、世界で唯一のモジュール実装された光渦多重器を開発しております。開発したデバイスは、直交する5つの光渦、2つの偏波をもった信号をクロストーク15dB程度で合分波することができ、波長分割多重などの従来の多重方式も併用可能なことから、次世代の大容量データ伝送のコアデバイスとして期待されます。