フォトニックバンド顕微鏡 FA・CEEDは、 フォトニック結晶・メタマテリアルをはじめとした様々な構造において、 バンドダイアグラム全域を高速かつ容易に測定することを可能にする装置です。
装置概要
フォトニック構造(光の波長以下の微細構造を一定の周期性をもって並べたもの)は、構造内の光と物質の相互作用を利用して、様々な光の操作を可能にします。代表的なものとして、フォトニック結晶、トポロジカルフォトニック結晶、メタマテリアルがあり、 これらはナノプロセス技術を使って半導体に微細加工を施すことによって実現されます。このような構造の光学特性を決定する重要な指標のひとつが、フォトニックバンド情報です。
従来、フォトニックバンド情報を得るには、それぞれのサンプル状態に適した形で光学系を組む必要があるとともに、光学系の調整を含めた測定・評価に多大な時間を要していました。本装置は、これらの問題を解決し、 各種フォトニック構造におけるバンド情報を容易かつ高速に測定することを可能にします。本装置を用いることで、様々なフォトニック構造の特徴を明確化でき、物性探求の指標とすることができます。また、各種フォトニック構造を利用した光デバイスの設計が容易となり、それらのデバイスを用いた新たな研究領域の開拓に繋げられます。
本装置は、科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業CREST 「トポロジカル材料科学に基づく革新的機能を有する材料・デバイスの創出」をとおして、株式会社東京インスツルメンツと共同開発した製品です。
特長
赤外ハイパースペクトルフーリエイメージングをベースとした高速・全自動測定
本装置は、赤外ハイパースペクトルイメージングにより、波長ごとのフーリエ画像を得た後、それらの画像をもとにフォトニックバンドダイアグラムを再構成しています。そのため、非常に高速かつ汎用的な測定が可能であり、フォトニックバンドダイアグラム全域を約5分で測定することができます。
指定した方位におけるバンド情報の取得可能
赤外フーリエ画像において任意のパスを指定することにより、全ての方位に対するバンド情報を取得することができます。また、サンプルの垂直方向を自動挿引することで3次元方向のバンド情報も併せて得られます。
特定モードのバンド情報を計測
入射光の状態を各種偏光子や波長板を用いて制御することで、フォトニック構造内に特定のモードを励振することができ、そのバンドダイアグラムの情報のみを取得することが可能です。
使用方法と測定データ
下記の動画は、正方格子のフォトニック結晶を測定している様子です。波長可変フィルターの中心波長を変えていくとフーリエ画像もそれに伴って様々な形状に変化していることが分かります。 本結果をもとに再構成されたフォトニックバンドダイアグラムでは、 正方格子のフォトニック結晶で予想される理論結果とほぼ同等の結果が得られます。
主な仕様
空間周波数フィルタリング4F光学系
対物レンズ | 観察視野:最大200×200 μm 倍率:60X程度 N.A.:0.9程度 |
可変範囲 | φ0.8~φ12の可変アパーチャー搭載 |
照明光源 | 300~2500 nm 出力:5.5 mW以上 (350~1800 nmの範囲、コア径200 μmファイバ使用時) ファイバーコア径:φ50 μm 光コネクタ:FC |
可視観察カメラ | CMOS カラーカメラ (500万画素以上、試料面視野は200×200 μm以上) |
赤外カメラ | 8万画素 320×256 有効撮像面積:9.6×7.68 mm 画素サイズ:30×30 μm フレームレート:90 fps A/D分解能:14 bit |
液晶波長可変フィルタ | 850~1800 nm 帯域幅 FWHM:6 nm以下 有効径:φ20 mm程度 応答時間:50~150 ms 最大入射照度:500 mW/cm2以上 許容角:±7.5゜以下 |
試料台ステージ
試料走査 XY軸ステージ | ストローク±10 mm 分解能full/half:0.5/0.25 μm以下 分割比1/20時:0.025 μm |
対物レンズ昇降ステージ
対物レンズ昇降ステージ | ストローク±10 mm以下 分解能full/half:0.5/0.25 μm以下 分割比1/20時:0.025 μm |
設置台
サイズ(W×H×D) | 350×600×100 mm |