マイクロ～ナノスケールの微小構造によって特定の波長の光を散乱、反射することで生み出される色を構造色と呼び、観測対象の持つ微細構造と屈折率が色を決める要因となります。自然界の多くの生物は構造色を上手く用いており、例えば、クジャクの羽根の色は、小羽枝と呼ばれる毛のような微小な構造の中に、円柱状のメラニン顆粒が正方格子に整列することによって作られています。

上記のような構造色を論じることは、観測対象物の優れた構造や機能などを解析する上で非常に有効ですが、一般的な光学顕微鏡では、色素由来の色と構造由来の色の区別することは困難です。そのため、実際に構造由来の発色を論じるには、走査電子顕微鏡などを用いた破壊評価が基本となってきました。

まず、測定ポイントにおける各波長のフーリエ画像を重ねることで、3次元フォトニックバンドを取得します。これは、光学的な分散関係をまとめたもので、構造由来の光学情報を強く反映しています。そのため、測定ポイントを移動させながら観測対象全域においてフォトニックバンドを取得することで、それらの情報を含んだマッピング画像を得ることが可能となります。得られた画像に対して、光の波長および波数ベクトルを指定することで、特定の光と相互作用する構造の情報を可視化することができます。

モルフォ蝶の羽の一部をPBIを用いて観察した結果を右に示します（比較のために、光学顕微鏡で観測した画像も並べています）。モルフォ蝶は羽を覆う鱗粉上に微細な棚状の周期構造があり、これによって構造色を示すことが知られています。しかしながら、それらの構造が場所によってどのように分布しているかを光学顕微鏡などの非破壊測定で直接観測することは困難です。PBIを用いることで、構造由来の情報を反映した画像が取得でき、周期構造の空間分布をある程度予想することが可能となります。